子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)、チョコレート嚢腫(チョコレートのうしゅ、またはチョコレートのうほう)の漢方的治療、手法による改善方を実例も交えてご紹介いたします。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)、あるいは卵巣嚢胞(らんそうのうほう)はこちらをクリックしてください

様々な病気と漢方
20年ほど前より漢方薬局をしておりますが、最近とみに子宮内膜症、チョコレート嚢腫(本来はチョコレート嚢胞:のうほう)のご相談が多くなり、また多くの経験をさせていただくことになりましたので、婦人科のページから独立させて文章を書き直してみたいと思います。
あくまでもHP上での記事ということもあり、実例も詳しく書くことが出来ない部分もあります。
また薬事法上の問題もあり書ききれない内容もあることをご理解ください。(2007年5月追加)
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 子宮内膜症の現代医学的な意味と解釈とまず書いておきます。
(きちんと調べたい方は、ネット上にたくさんありますので、検索で医学サイトを探して勉強してください)
「子宮内膜症」は子宮内膜の組織が、あるべき部位を離れて腹腔内、子宮壁などに発育増殖したものを言います。
月経血が多くなったり、激しい生理痛があります。
子宮内膜症の場合、子宮内膜の付着(癒着)する場所によって、
排便痛、排尿痛、まれに交接痛、胃痛などまで生じることがあります。
「チョコレート嚢腫」、「チョコレートのう胞」は子宮内膜由来なのですが、原因は分からないものの卵巣内に子宮内膜が増殖して、生理と同じく時期が来て出血して剥がれます。
その出血が体内に吸収されない場合、残って滞留してくることになります。いわば生理血の古いものが残ったという状態という具合に考えれば分かりやすいでしょう。
現代医学ではホルモン(エストロゲン)の影響下にありますので、現在は薬物療法と手術療法が行われています。
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子宮内膜症と漢方の実例
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過去にミニコミ誌に掲載したものを少し加筆、また訂正して書いております。
非常に強い生理痛などで婦人科を受診して、子宮内膜症と言われて驚いたということがよくあるようです。
今回は、生理痛と月経過多に関係の深い「子宮内膜症」を取り上げました。
「子宮内膜症」は子宮内膜の組織が、あるべき部位を離れて腹腔内、子宮壁などに発育増殖したものを言います。
生理ごとに出血がありますので、月経血が多くなるのと、激しい生理痛があります。
現代医学ではホルモンの影響下にありますので現在は薬物療法と手術療法が行われています。
漢方では子宮内膜の組織増殖を
『お血』ととらえ、漢方薬を使用し効果をあげています。
処方選択は漢方医学特有の「望・聞・問・切」により、たとえば外観、舌の形や色、舌苔等を見たり,自覚症状や体質に関係のある質問をして決定します。
インターネットと通じてのご相談がものすごく多くなり、薬局での直接対面以外に、メール相談がかなりの割合になりましたので、情報は限られるのですが、なるべく「舌」の写真の添付をお願いしています。もちろん無理な場合もございますので、それは質問の返信やお話から話を進めて行きます。
漢方薬の名前をいつも書かないのは、処方自体多くあるのと、うかつに書いて勝手に自分判断で買い求めたりするのを防止するためです。
私達のような専門家でもその判断に苦しむものです。
[実例]
子宮内膜症の患者さん
25才未婚の女性で子宮内膜症及び子宮内膜症性嚢胞(卵巣の中に発生した内膜症によって起こるもので、暗黒色の血液様の内容物を含むので
チョコレート嚢腫またはテール嚢腫と言われる)で相談。婦人科にかかっておりホルモン剤による治療を受けていました。
ホルモン剤を止めると強い下腹部痛と耐え難い生理痛がある。
舌の状態はお血の存在をうかがわせる「お斑:お血によるシミのようなもの」があり、舌裏静脈も青黒く盛り上がっています。下半身が冷える。時にのぼせ。肩こりもひどい。
煎じ薬でいくことにしました。
4ヵ月後にはかなり小さくなったそうであります。この時点でホルモン療法を中止しています。
約10ヵ月で下腹部痛、生理痛もとれほぼ回復状態と思われました。
1年で患者さんは自分の判断で漢方薬を中止。
その間お薬の内容の変更・微調整は5回行っています。
ただ2年後にまた同じようになり、ホルモン療法もやりましたが調子が良くなく、再度漢方を希望してきました。
このときもうまい具合に良くなり、現在までもう8年継続して、子宮内膜症もよく、月経周期も28〜30日と正常となっていますが、飲んでいると身体の調子が良いと続けておられます。
最近は漢方薬もエキス剤(顆粒剤)が多く出ておりますが、この卵巣嚢腫や特に子宮筋腫は煎じ薬の方が、効果の点で一枚も二枚も上であると思います。
匂いが強い、作るのが面倒と言う欠点がありますが、漢方薬の本来の飲み方ですので効果も良いのでしょう。
1999年年10月
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子宮内膜症と卵巣嚢腫と漢方
(卵巣嚢腫はまだ書いていません)
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これも、過去のミニコミ誌に書いたものです。
少し前になりますが、私の大好きな歌手、宇多田ヒカルさんが卵巣嚢腫という病気で腫瘍を摘出するという事がありました。
その後のホルモン療法で体調を崩し、記事などでは今だに体調がすぐれないように読みました。個人的にとても残念に思います。
近年、この卵巣の腫瘍や、子宮内膜症(成人女性10人に1人が子宮内膜症と聞いています)になる女性が急増していると言われています。
最近の新聞に、岡山大学医学部産婦人科工藤教授グループが子宮内膜症の患者さんの腹水に環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)として影響を懸念されているビスフェノールAという物質が普通より多く存在し、病気の悪化と関係していることを突き止めました。
どうして急激にこの婦人病が急増しているのか?どうやら環境問題とは無縁ではないという感じがしてまいりました。ということは、今後においてもまだまだ増えるだろうと想像されます。
子宮内膜症をインターネットで調べますと、『子宮内膜と似た組織が、卵巣、卵管、腹膜などに発生する原因不明の病気です。
強い月経痛に悩んでいる患者の7〜8割は子宮内膜症の疑いがあると言われています。
この毎月増殖する組織は、月経血のように体外に排出されず、体内にたまっていきます。
病変が最も多く生じる卵巣では、古い血液が変性してチョコレート状になり腫れる(チョコレート嚢腫)ができることもあります。
また、卵管や腹膜では周囲の臓器と癒着して不妊の原因になります。』と言う風に書いてありました。
それ以外に私の患者さんで経験した事の中には◎排尿後痛◎排便後痛◎胃痛・腹痛など婦人科系以外の場所の痛みを訴える人が割合いました。
これらは特に、月経の始まる約2週間前から(ちょうど排卵期にあたります)ひどくなってくるようで、月経期ぐらいには治まってきますが、そのときは月経痛が激しく女性を困らせています。
これらの原因は、特に痩せ型の女性は内臓下垂の人が多く、骨盤あたりに胃腸やら婦人科器官やらが非常に接近して存在するため、子宮内膜様組織が増殖した時に、胃腸や膀胱にもその周りに付着、癒着した結果、おしっこや排便した後、その周りの筋肉が引き攣れて痛むのではないかと自分なりに考えております。
実際に、子宮内膜症で漢方薬を飲んでいただいている方で上記の症状が取れている人がいますので、あながちこの仮説は間違っていないように思っています。
普段の注意としては、『冷え』は筋肉をちぢませ、引きつらせる性質がありますので外面的にも、内面的にも冷やさない事が痛みを少しでも和らげるコツです。
お困りの方は是非、漢方をお試しください。
2002年10月分
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子宮内膜症にロイコトリエン拮抗薬で軽快
(2004年12月19日読売新聞記事より)
日記帳に書いた内容をここにコピーして残します。
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2004年12月19日
日々雑感に記録
(読売新聞(2004年12月19日大阪)の記事より要約します)
私のHPでもよく取り上げている、最近増えている女性の病気『子宮内膜症』。
この子宮内膜症の痛みなどの諸症状の緩和に、抗アレルギー薬の「ロイコトリエン拮抗薬」が有効であるとの記事がありました。
記事の要約は以下のようになります。
大森赤十字病院(東京)産婦人科医師の内出一郎先生と、栃木臨床病理研究所長の菅又昌雄先生らは、子宮内膜症の発症にアレルギー反応が関与している可能性があることを動物実験で確かめた。
アレルギー反応にかかわる「肥満細胞」という特殊な細胞が異常に増えている事がわかった。メカニズムは今の所は不詳だが「卵管を通って月経血が逆流し、アレルギーを起こしているのではないか?」というふうに仮説をしている。
そうであれば既存の抗アレルギー薬が有効ではないかという事で、気管支ぜんそくをもつ患者約100人にロイコトリエン拮抗薬を服用してしてもらったところ、約8割で月経痛の改善や月経血量の正常化が見られたそうです。妊娠した人が次々と出てきており、妊娠を希望する患者に適していると話しています。
子宮内膜症の組織内では肥満細胞が多く見られ、アレルギー反応(脱顆粒現象:何らかのアレルギー刺激を受けて細胞膜が破れ、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性化学物質がばらまかれる現象)がおきている。
抗アレルギー薬、中でもロイコトリエン拮抗薬が効果的ということである。
代表的なロイコトリエン受容体拮抗薬としては次のものがある。(基本的にぜんそくの管理薬として用いられる要処方薬である)
◎一般名 プランルカスト 商品名 オノン
◎一般名 ザフィルルカスト 商品名 アコレート
◎一般名 モンテルカスト 商品名 キプレス、シングレア
ぜんそくの発作を予防する薬として数年前から使われだした薬で、保険調剤をしている薬局薬剤師なら知らない人はいないだろうという薬です。
ぜんそく薬としては、病院では保険が適応するが、この子宮内膜症には適応外なので、原則として保険がきかない。
まだ始まったばかりの治療で、本当に有効かどうかは、これからさらに大規模な調査が必要と締めくくっています。
私は個人的に、免疫異常が最近の多くなってきている病気の大部分をしめる原因となっているのではないかと考えている一人なんですが、上記の仮説もアレルギー反応(免疫異常の一種)の説明となっています。
現代医学の子宮内膜症の原因の説明には、下記のようなことが一般に言われています。
★子宮内膜は排卵後(月経のはじまる約2週間前)から月経が始まるまで内膜が子宮の中に出来ます。私の話では、簡単に、仮に受精卵が子宮に到達した際に居心地よくおられるようにベッドを作っていると説明しています。それが妊娠しない場合には、月経時にははがれ落ちるのです。
さて、昔はお子さんを生む回数が多く、3〜5人なんていうお子さんは普通でした。ということは、女性が妊娠して、出産する回数が多いとなると、一生における生理回数も現代の女性より少なくなります。そのため子宮内膜を作る回数も昔は少なかったという事になります。
また現代の生活スタイルからは、女性の出産年齢も昔に比べ遅い事が多くなってきています。そのため出産にいたるまでの生理回数が多くなり、当然子宮内膜の作られる回数も多くなります。生理の回数が多ければ多いほどこの病気の可能性が多くなるというのが、現代の婦人科の考え方のようです。
それは十分理解できるのですが、最近は子宮内膜症の女性のご相談でも、18〜19歳というお若い方も増えてきています。
これはすぐ上の説明ではちょっと考えられないことではないかと私は考えています。
というような事で、この表題のアレルギー反応という仮説は受け入れられやすいと思い今回は記事に書いてみました。
私は漢方で、子宮内膜症に対処しているのですが、ひょっとすると抗アレルギー薬の併用で数段の治療効果がアップするのではないかと期待しています。
副作用少なく、患者さんにとって良い治療が望まれますね。
ちなみに、現代の子宮内膜症の対応は、ホルモン療法により閉経状態にする(更年期障害のような副作用)、あるいはそこまで行かなくても、低用量ピルによる妊娠しているような状態にして月経を止め、子宮内膜を作らせない状態を維持する。
すなわち排卵を抑制することになります。
またどうしようもない痛みなどの場合には、内視鏡手術による癒着部分を削除して取り除く方法がとられますが、いずれ再発する可能性もあるので、いざという場合に行う方法と考えてよいと思います。
今回のこの新聞記事の、子宮内膜症にロイコトリエン受容体拮抗薬を使った試みは、大森赤十字病院だけで行われているものかもしれません。
一般の病院では受け入れられるものではないかもしれません。
これを読んで興味の持たれた方は、すぐに受けられる治療ではないかもしれないことをご理解ください。
気管支喘息と子宮内膜症を両方お持ちの方は、これらの薬を使ったあとの子宮内膜症の程度の変化をよくみてください。
私にその内容をお伝えいただければさらにうれしいことです。
★追加
新聞上での説明では、ロイコトリエン受容体拮抗薬が気管支喘息にのみ適応があるようになっていますが、上の3種類のうち、ザフィルルカスト(アコレート)と、モンテルカスト(キプレス、シングレア)は気管支喘息にのみ適応症を持ちますが、プランルカスト(オノン)は気管支喘息とアレルギー性鼻炎にも適応を持ちます。
★さらに追加
2014年9月追加文章:オノン、シングレア、キプレスは、現在は気管支喘息、アレルギー性鼻炎に対して保険適応の効能・効果が記載されています。
ただし、すべてのロイコトリエン受容体拮抗薬はいまだ、子宮内膜症の保険適応は取れていません。
製薬メーカーは追加適応の申請をしていないのかもしれません。
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